ロゴス聖典 · クセノポン福音書

クリトンの夜の訪れ

クセノポン福音書 5 · 第一の証言:公義、市民、責務

クセノフォン。紀元前四三〇年頃アテナイに生まれ、前三五四年頃に没す。軍人、歴史家、ソクラテスの弟子。ペルシアの内乱ののち、一万のギリシア傭兵が敵地の奥に取り残され、将たちは休戦の名のもとに殺された。彼は将に推され、バビロンの北から黒海まで一軍を導いた。『アナバシス』に記されている。ほかに『ソクラテスの思い出』『家政論』『キュロスの教育』『ギリシア史』を書いた。彼の記すソクラテスは、家の切り盛りを語り、人を鍛え、馬を論じ、金を論ずる者である。彼自身はポリスの古い礼を守った。犠牲を捧げ、託宣を問い、事を神々に帰した。本会はこれをそのまま記し、彼のために覆わない。四人の証人のうち、戦場で人を率い、かつ自ら畑を耕したのは彼ひとりである。この巻は記録として書かれている。数、日付、名のあるところは、あったとおりに置かれている。

5.1処刑の三夜前、クリトンは看守を買収し、夜明け前に石牢へ入った。
5.2デロスからの船はまだ着いていなかった。法により、船が着くまで処刑はできぬ。まだ時があった。
5.3クリトンは言った。「金は用意した。道は整えた。テッサリアには受け入れる者がいる。あなたはただ立って歩き出せばよい。」
5.4導師は問うた。「我らは生涯、何を語ってきたか。」
5.5クリトンは言った。「法に従うべし、とあなたは言ってきた。」
5.6導師は問うた。「それは法が私を正しく扱うときのために言ったのか、それともいかなる場合でもと言ったのか。」
5.7クリトンは黙した。
5.8導師は言った。
5.9「人は、法が己の意に適うときだけ市民であることはできない。」
5.10「今夜私が壁を越えるなら、生涯語った一句一句が私とともに越え、壁の外で死ぬ。」
5.11クリトンは泣いて言った。「しかし彼らは間違っている。」
5.12導師は言った。「彼らは間違っている。だがそれは私が間違ってよい理由にならぬ。誤りに誤りで報いるのは、誤りを倍にするだけだ。」
5.13夜明け近く、クリトンはひとり石牢を出た。
5.14この一夜を記すのは、後の世に知らせるためである——扉は開いていた、と。
5.15導師の死は他人が加えたのではない。彼が選んだのである。
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