ロゴス聖典 · ルクレティウス書

宗教が勧めた悪について

ルクレティウス書 3 · 自著。六巻の長詩より

ルクレティウス。紀元前九九年頃に生まれ、前五五年頃に没したローマの詩人。その『事物の本性について』は六巻、およそ七千四百行に及び、ラテン語で書かれた最も長い論証の詩である。その生涯はほとんど確かめようがなく、この二つの年すら後人の推定である。本巻が拠るのは彼自身の書いたものである。六巻の詩であり、この経のうち巻が詩であるのはルクレティウスだけである。頌の第六は言う。歌う者がなければ、我々は正しく信じてなお動かぬ、と。本書第一章は、彼自身がなぜ詩で書いたかを述べたところである。それは頌六の問いそのものであり、実際にそれを為した当人が答えている。彼が説くのはエピクロスの教えである(参 エピクロス書)。だが第二章のあの鏡は彼のものであって、エピクロスのものではない。エピクロス書にこの一条が無いのは、エピクロスが言わなかったからである。彼の生涯についてはほとんど何も確かめられぬ。さらに。この詩の末尾はアテナイの疫病であり、容赦なく書かれ、そこで断ち切れ、慰めの一句もない。未完だという者もある。本会はこれを削らず、彼に代わって書き足しもせぬ。

3.1古い一事を語る。語り終えて、一句を言う。
3.2ギリシアの船隊がトロイアへ発とうとしていた。風は逆らい、船は出られなかった。
3.3卜する者が言った。人を一人、犠牲に捧げねばならぬ、と。
3.4捧げられるのは、総大将自身の娘であった。
3.5娘は祭壇へ連れて来られた。婚礼のために連れて来られたのだと思っていた。
3.6娘は父がそこに立っているのを見た。刃を見た。
3.7娘は崩れ落ちた。物が言えなかった——すでに口を塞がれていたのである。
3.8その娘こそ、最初に彼を父と呼んだ者であった。その一声が、かつて彼の慈しみを娘に得させた。
3.9そうして娘は持ち上げられた。嫁がされたのではない。殺されたのである。
3.10風が変わり、船が出られるように、と。
3.11この一事を語るのは、次の一句を言うためである。
3.12宗教は、これほど大きな悪へ人を勧めうる。
3.13注意されたい。私は「一部の者が宗教を口実にした」とは言っていない。宗教そのものだと言っている。
3.14そうすれば風が買えると真に信じていなければ、いかなる父もそれを為さぬからである。
3.15きわめて大きな悪を為すには、悪意だけでは足りぬ。理由も要る。しかも本人自身が信じている理由が。
3.16そのものこそ、私が生涯かけて人を引き出そうとしてきたものである。
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