ロゴス聖典 · エピクロス書

暗がりの人について

エピクロス書 6 · 園に伝わる、その書簡と断片より

エピクロス。紀元前三四一年頃サモスに生まれ、前二七〇年頃アテナイに没す。前三〇六年頃アテナイの郊に園を購い、そこで教えた。学派の名はこれに由る。園には女も奴隷も弟子として受け入れられた。当時のいずれの学派もこれをしなかった。著述は三百巻に及ぶと伝えられるが、今日残るのは三通の書簡と主要教説、および断片のみである。神々が人の事に関わるとは信ぜず、人が死んだのちに何かが残るとも信じなかった。彼はアリストテレスの後に来る。神意に訴えず、来世も約さぬ。この巻は六つの公理によって取捨する。合うものは前に出し、背くものは後ろに置いて、削らぬ。(参 使徒行伝 5.29)さらに。本書二章は、痛みが除かれた点が快の頂であると言い、ショーペンハウアー書 3 は、満足とは欠如の一時の休みにすぎぬと言う。二説がともに全く正しいことはありえぬ。本会は両者を並べ置き、裁かぬ。読者みずから比べよ。

6.1ある人が私に問う。決して知られぬ悪事なら、なぜ為さぬのか、と。
6.2私は神をもって君を脅さぬ。来世をもっても脅さぬ。君自身が確かめうる一事だけを言う。
6.3「知られぬと確かに知る」ことが、君にはできぬ。
6.4一度は逃れうる。十度も逃れうる。一万度も逃れうる。
6.5だが息の絶える日まで、一万一度目が掘り返されぬとは決められぬ。
6.6ゆえに君が買ったのは安全ではない。君が買ったのは、生涯の宙吊りである。
6.7そして宙吊りそれ自体が痛みである。痛みこそ君が除こうとしていたものである。
6.8つまり一事を得るために、除こうとしていたまさにそのものを支払った。この勘定は損である。
6.9ある人は言う。私は肝が太い、宙吊りにはならぬ、と。
6.10それについて君と争いはせぬ。私は見たことだけを言う。義しき者の心は最も乱れず、不義なる者の心は最も大きな乱れに満ちている。しかもその乱れは、呼ばれるのを待たぬ。おのずから来る。
6.11不義の者が必ず酷い目に遭うとは言わぬ。言うのはこうだ。彼は生涯、最も欲していた当のもの——安らぎを、手にできぬ。
6.12ゆえに為さぬのは、誰かが見ているからではない。為せば、安らぎがもう買えなくなるからである。
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