ロゴス聖典 · モンテーニュ書
私自身がこの書の材料であること
モンテーニュ書 1 · 塔にて記す、その『エセー』より
この人は自ら書いた。他人の記録を要さない。彼はこの経の他の者と異なる。他の者は自分の信ずるところを記し、彼は自分がどうであるかを記す。前後が食い違うところを彼は消さなかった。この経も消さない。
1.1読者よ、これは正直な書である。
1.2初めに言っておく。これを書いたのは、私自身と数人の親しい者のためだけである。
1.3君に何かを教えるつもりはない。教える気なら、まず自分を飾ったであろう。
1.4私は飾っていない。ここにいるのは素のままの私だ。無造作で、平凡で、欠点がある。
1.5この書の材料は私自身である。
1.6ある者は言う。それが書くに値するか。一人の人間に何が書けるのか、と。
1.7私は答える。他人のことは知らぬ。私はこの一人を知っている。しかもごく心もとなく知っている。
1.8四十のとき、私は自邸の塔に退いた。心を静め、そのままにしておこうと思ったのだ。
1.9逆になった。心は綱を放れた馬のように、前より荒く走り、奇怪なものを次々に生んだ。
1.10そこで私はそれを一つずつ書き留めはじめた。書かれれば自ら恥じ入るかと思って。
1.11これがこの書の由来である。学ではない。帳面である。
1.12私は存在を描かない。移りゆきを描く。
1.13一歳から七歳へというような移りではない。この一分から次の一分へ、である。
1.14ゆえに私はしばしば自分と食い違う。直さない。直せば帳面ではなくなる。
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