ロゴス聖典 · ルクレティウス書

無からは何も生じないことについて

ルクレティウス書 5 · 自著。六巻の長詩より

ルクレティウス。紀元前九九年頃に生まれ、前五五年頃に没したローマの詩人。その『事物の本性について』は六巻、およそ七千四百行に及び、ラテン語で書かれた最も長い論証の詩である。その生涯はほとんど確かめようがなく、この二つの年すら後人の推定である。本巻が拠るのは彼自身の書いたものである。六巻の詩であり、この経のうち巻が詩であるのはルクレティウスだけである。頌の第六は言う。歌う者がなければ、我々は正しく信じてなお動かぬ、と。本書第一章は、彼自身がなぜ詩で書いたかを述べたところである。それは頌六の問いそのものであり、実際にそれを為した当人が答えている。彼が説くのはエピクロスの教えである(参 エピクロス書)。だが第二章のあの鏡は彼のものであって、エピクロスのものではない。エピクロス書にこの一条が無いのは、エピクロスが言わなかったからである。彼の生涯についてはほとんど何も確かめられぬ。さらに。この詩の末尾はアテナイの疫病であり、容赦なく書かれ、そこで断ち切れ、慰めの一句もない。未完だという者もある。本会はこれを削らず、彼に代わって書き足しもせぬ。

5.1この書の下に一条があり、すべてはその上に立っている。
5.2無からは何も生じない。
5.3もし物が無から生えうるなら、何からでも何でも生じうる。人が海から生え、魚が空から降ってくる。
5.4我々が見ているのはそうではない。あらゆる物は定まった何かから出て、出たのちは自らの種に従って育つ。
5.5そしてその裏返しがある。真に無になる物もまた、無い。
5.6物は散る。だが散ったのは配列であって、材ではない。(参 序巻 1.16)
5.7材はなお在る。ほかへ行き、ほかの物の中へ入ったのである。
5.8これを言うのは物理を説くためではない。次の一句のためである。
5.9君を成しているものは、一つとして滅びぬ。君が死んでも、その材はなおこの世を歩き回る。
5.10これは不死ではない。不死と取ってはならぬ。その材の中に君はいない。
5.11私は君を欺く慰めを与えぬ。
5.12ただ知ってほしい。君は有から無へ移るのではない。ある配列から、別の配列へ散るのである。
5.13「無になる」ことを恐れる者は、起こりもせぬことを恐れている。
5.14そして実際に起こることについては——君がいなくなることについては——上で述べた。その事の中に、何かを受けている君はいない。
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