ロゴス聖典 · ジョン・スチュアート・ミル書
買わなかった選挙について
ジョン・スチュアート・ミル書 6 · 自著。『自由論』と『自伝』より
ジョン・スチュアート・ミル。一八〇六年ロンドンに生まれ、一八七三年フランスのアヴィニョンに没す。父が自ら教育した。三歳でギリシア語、八歳でラテン語、同年配の子と交わることを許さなかった。二十歳で心が折れ、ワーズワースの詩を読んで戻ってきた。一八五九年『自由論』、一八六九年『女性の隷従』、『自伝』は没後の刊行である。一八六五年下院に入り、一八六七年、女性に選挙権を与える動議を出した。英国議会において最初のことであった。本巻が拠るのは彼自身の書いたものであって、他人の記録によらない。彼はこの経の中で唯一、宗教を持ったことのない者である——捨てたのではなく、はじめから持たなかった。第三章と第四章は、本経に欠けていた一事を補う。会規七が柱廊に経文を駁すことを許す、その理由である。
6.1六十の年、議員に立つ気はあるかと訊きに来た者がいた。
6.2私は条件を並べた。並べ終えて、これで終いだと思った。
6.3言った。私は票を頼みに回らぬ。
6.4言った。私は一文も出さぬ。選挙の費えは払わぬ。
6.5言った。当選しても地元の用は務めぬ。私は国の事のために入る。
6.6さらに言った。私はあの場所に入りたくない。
6.7それでも彼らは私を立てた。
6.8ある集まりで一人が立ち上がり、私の書いた一節を手にして、衆前で読み上げた。
6.9その一節はこう言う。英国の労働者は、他国と違って嘘を恥じはするが、しかし概して嘘をつく者である、と。
6.10読み終えて彼は問うた。これはあなたが書いたのか、と。
6.11部屋じゅうが、私が言い逃れるのを待っていた。
6.12私は二語で答えた。私が書いた。
6.13一瞬の静けさののち、彼らは拍手した。
6.14のちに一人の労働者が言った言葉を、私は生涯覚えている。労働者が欲しいのは友であって、追従する者ではない、と。
6.15私は当選した。
6.16在職の数年で、私が何より重んじる一事を行った。
6.17選挙法の改正にあたり、条文の「男」の語を「人」に改めるよう動議した。
6.18それは通らなかった。この国がこの問いに投票した最初であった。
6.19この二つを並べて記すのは、同じ一事だからである。
6.20人のために言葉を飾ってやる必要はない。ただ、彼らを子ども扱いしないだけでよい。
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