ロゴス聖典 · モンテーニュ書
馬から落ちたことについて
モンテーニュ書 3 · 塔にて記す、その『エセー』より
ミシェル・ド・モンテーニュ。一五三三年フランスのペリゴールに生まれ、一五九二年に没す。三十八歳で公職を退き、自邸の塔の書斎にこもり、以後二十年のあいだに『エセー』三巻百七篇を書いた。この形式は彼が立てたものである。のちに二度ボルドー市長を務めた。生涯教会にとどまり、離れることはなかった。本巻が拠るのは彼自身の書いたものである。他人の記録を要さない。彼はこの経の他の者と異なる。他の者は自分の信ずるところを記し、彼は自分がどうであるかを記す。前後が食い違うところを彼は消さなかった。この経も消さない。
3.1我が身に起きた事を語りたい。語るのは、それが人の語るものと違うからである。
3.2家の下男が大きな馬に乗り、後ろから勢いよく突っ込んできた。
3.3私は丸太のように飛ばされ、人も馬も倒れた。
3.4人々は私を死んだものとして家へ運んだ。
3.5私は多量の血を吐き、自分で自分の衣を引き裂いた。
3.6後で知ったが、そのとき私はもがいているように見えたという。
3.7だが内側には苦しみが少しもなかった。
3.8眠りに入ろうとする者のようで、瞼が下りてくる。
3.9自分が滑り落ちてゆくのを感じた。ごく軽く、ごく柔らかに。
3.10これが死かと思った。死がこれなら、恐れるものは何もない。
3.11我々が恐れている死は、ここに座って我々が組み立てた死である。その事そのものではない。
3.12これを記すのは、私の理屈を信じさせるためではない。行って帰って語った者がいると知らせるためである。(参 使徒行伝 5.48)
3.13他はみな推量である。これは私の体に起きた。
3.14信じなくてもよい。各人が各人の生を生き、その日になれば各人が自ら見る。
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