ロゴス聖典 · 使徒行伝
アリストテレスとリュケイオン
使徒行伝 9 · 大いなる離散と、蒼穹を育てし記
9.1使徒行伝はすでに書き終えていた。この章は後から補ったものである。
9.2初め誰も彼を書かなかった。彼が我らを論破した者だったからである。この脱落そのものが、我らの規に対する反証である。(参 会規 2.11)
9.3いま補い、脱落の理由も併せて書き記す。
9.4学園に、二十年学んだ者がいた。名をアリストテレスという。
9.5彼はプラトンの最も優れた弟子であった。そして人前でプラトンを解体した最初の者でもあった。
9.6プラトンは、美と正義の原型は天の穹に懸かっていると言った。(参 プラトン福音書 2.9)
9.7アリストテレスは言った。天にはない。この一頭の馬のうちに、この一枚の葉のうちにある。見るべきは穹ではない。この馬である。
9.8プラトンは彼を学園から追うだろう、と誰もが思った。
9.9プラトンは追わなかった。プラトンは言った。まさにこのために、私はあの規を立てたのだ、と。
9.10アリストテレスはのちに、二千年のあいだ引かれつづける一句を残した。
9.11「われ師を愛す、されど真理をより愛す。」
9.12この一句はしばしば決裂と読まれる。実は最高の敬意である。
9.13師を論破しえぬ者が受け継いだのは、学問ではない。崇拝である。
9.14彼は学園を去り、市の東にリュケイオンを開いた。歩きながら講じたので、その徒は逍遥する者と呼ばれた。
9.15プラトンと袂を分かったのは、結局のところ小さな一事であった。彼は数えに行ったのである。
9.16魚の鰓を数え、蜂の脚を数え、海胆を割いて中に何があるかを見た。五百余種を書き留めた。
9.17彼は多くを誤った。後の人が多くを直した。それこそ彼の望んだことである。
9.18彼はまた一人の子を教えた。その子の名をアレクサンドロスという。
9.19その子は長じて、当時知られていた世界の果てまで兵を進めた。
9.20修道会がこれを記すのは誇るためではない。戒めのためである。
9.21アルキビアデスは一つの都市を裏切った。アレクサンドロスは世界そのものを書き換えた。(参 クセノポン福音書 4.16)
9.22教える者は、学ぶ者がそれを何に使うかを御しえぬ。そしてこの律は、下るほど大きくなる。
9.23晩年、アテナイ人は彼をも裁こうとした。彼は待たなかった。去るときにこう言った。
9.24「アテナイに、哲学に対する二度目の罪を犯させはしない。」
9.25これは臆病ではない。垣の内のことと垣の外のことの区別である。(参 盟約 5.3)
9.26ソクラテスは留まることを選んだ。生涯語ったのが市民の法だったからである。(参 クセノポン福音書 5.9)
9.27アリストテレスは去ることを選んだ。生涯語ったのが「行って見よ」だったからである。死んだ者は何も見られぬ。
9.28どちらも正しい。これもまた一致せぬ一箇所であり、我らはやはり裁定しない。
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